2016年5月8日日曜日

真剣師 小池重明(団鬼六著、幻冬舎アウトロー文庫)その1

「真剣師」とは、自分の対局に自分の金だけでなく、他人の金も掛けて勝負する将棋指しで、プロ棋士ではありませんが、1局の勝敗が自分の収入に直結している点では、プロ中のプロと言えます。

この本を読んで初めて知ったのですが、団鬼六はアレな小説を書くだけの人ではなく、私財を投げ打ってまで将棋雑誌を発行する程の将棋好きで、実力はアマ五段で、自宅にプロ棋士やアマ強豪が出入りしています。

小池重明は将棋指しとしてかなり強く、アマ相手では向かうところ敵なし、アマ名人を2連覇しています。しかし、そこまで強く、また名が知れ渡ると、真剣師としての稼業が成り立ちません。

それだけ強いと、新聞社、将棋雑誌の主催でプロと対局する機会もありますが、プロの若手だけでなく高段者との対局でも勝っています。
  • 大山康晴十五世名人に二日酔いにもかかわらず、角落ちで勝利
  • 中原誠名人に角落ちで勝利
  • 森雞二(棋聖戦挑戦者)に角落ち、香落ち、平手の3局とも勝利
将棋がここまで強いのならプロになれそうなもので、また、小池自身もプロを目指します。ただ、年齢が30歳を超えていたので正規の手順ではプロになれず、特例でプロになろうとします。将棋の実力は申し分ないのですが、将棋以外のことは破綻しており、素行の悪さからプロ棋士になれませんでした。